私はピアノはほとんど弾けないが、ベートーベンの月光ソナタ第1楽章だけは、上手くはないが弾ける。これは、余りにこの曲が好き過ぎて、この曲だけ繰り返し練習したからである。この暗い感じが味わい深い。聞くだけでも良いが、やはり自分で奏でる方が感動が大きい。
第1楽章は、第2楽章、第3楽章より圧倒的に簡単で、やろうと思えば私のような者でも一点突破できる。にも関わらず、いや、だからと言うべきか、テンポやペダリングに自由度と言うか、ベートーベンが記述した楽譜の解釈に幅がある。プロの演奏家や音楽家でも未だに議論が続けられているようだ。結論が出ることはないだろう。
特に、ペダリングについては、楽譜には「弱音器を使うな」と書かれており、これは現代のピアノで言うダンパーペダルを最初から最後まで踏み続けろ、という意味になる。ここまでは全員の解釈が一致している。下の楽譜の”Senza Sordino”と書かれている部分だ。

ただ、現代のピアノでこのとおり弾くと、音が長引きすぎてしまい、音が混ざって不協和音になる。昔のピアノは弦の減衰が元々大きく、弱音器を使っても音が長引かないそうである。そこで解釈が分かれる。
- それでもベートーベンの指示に忠実に従って、ペダルを踏み続けるべきだ。
- 作曲時のピアノと現代のピアノでは構造が違うため、現代のピアノに合わせた弾き方をすべきだ。
- 当時のピアノっぽく、ペダルを1/3だけ中途半端に踏み続けるべきだ(ある意味楽譜に忠実)。
という具合である。テンポにしても、
- ベートーベンの頃はもっと早く弾いていたはずだという説もある
- 演奏家によってかなりテンポが違う
- 部分的にわざと遅くしたり、逆に時計のように一定のリズムで弾く人もいる
と、多種多様で興味深い。遅く弾く人だと8分超え、早い人だと6分を切る人もいるから、30%のばらつきだ。自分は下手くそなのと、しみじみと弾きたいので8分くらいである。最も好きな部分はここである。悲しいような流れるようなメロディで、上手く弾けると気持ちが良い。

まあ結局、自分のために自己満足で弾いているわけなので、好きなように弾けば良いと思う。
楽譜の引用元 https://s9.imslp.org/files/imglnks/usimg/f/f8/IMSLP15808-Beethoven_-_Op.27_No.2_-_Cappi_-_Score.pdf