動的平衡

投稿者: | 2025年10月26日

https://www.shogakukan.co.jp/books/09825301 福岡伸一 著

生命の本質について、そのあり方の観点から考察した本。生命の定義でいう、恒常性と代謝にフォーカスしている。あらゆる生命体は想像と破壊のバランスで成り立っており、破壊のほうが若干早い事によってエントロピー増大に抗うことができること、寿命があることを解釈しているのは面白い。

敢えてそうしているのか分からないが、自己複製(生殖)については生命の本質として重要視していない。仮想的に寿命がなく子孫が残せないがその他の生命活動をする種があったとして、それは生命ではないと言うのは私には納得できないので、私も自己複製が本質ではないと思っている。(デカルト的な検証法)

私の理解では、生命とは「エネルギーが通過する系の自励振動と連鎖反応」である。この2つの物理現象は命と同様、生と死のような状態がある。心臓の鼓動は化学反応を伴う自励振動であり、脳内における情報の循環は出力と入力がループした連鎖反応である。本書の主張する動的平衡というのは、このエネルギーの流れに相当し、その流れに必要な条件を一つ明らかにしている。