インターステラテクノロジーズ(IST)がOSSで開発している、Open Tsiolkovskyというロケット飛行解析プログラムを用いて、高度20kmからロケットを空中発射して人工衛星を地球周回軌道に打ち上げる計算を行った。
空中発射ロケットの検討のため、軌道最適化機能を備えたロケット飛行解析プログラムを自前で開発中である。これを用いて最適化したものと同一の飛行条件をOpen Tsiolkovskyに入力した結果、同じ軌道を再現することを確認した。
なお、Open Tsiolkovskyを使ってみた中で気づいた留意点を最後にまとめた。
解析条件
航空宇宙技術 Vol. 19 (2020), pp. 39-45に掲載される、2.5トン級ロケットの空中発射仕様。目標軌道はSS-520-5と同じ、LEO180km×2000km。
解析結果
IST稲川さんによるSS-520-4の推定解析によれば、地上発射の場合の射角は85度で、1段はほぼ大気圏を抜けるためだけの役割を持ち、水平加速は2段・3段の役目であったが、空中発射では射角を55度まで下げられるため、割と素直な軌道になっている。詳細は今後、論文等で発表していく予定である。
実行時のターミナル出力。分離した各段の運動も本体と独立して計算され、それぞれの落下点も計算してくれる。軌道投入によりIIP(真空中瞬間落下点)が消滅すると、落下点経緯度ばゼロ表示になる。
> .\OpenTsiolkovsky.exe .\param_SS-520AL.json
Hello, OpenTsiolkovsky! version:0.41
1 stage impact point [deg]: 0.046556 6.197670
2 stage impact point [deg]: 0.081853 21.219442
3 stage impact point [deg]: 0.000000 0.000000
1 stage dumping product impact point [deg]: 0.034398 4.594931
max altitude[m]: 1967646
max downrange[m]: 20008826
Simulation Success!
Processing time: 4052[ms]
Open Tsiolkovsky v0.41 使用時の留意点
- 姿勢角履歴は、局所上下角で指定する。地球の曲率を考慮した、局所水平面基準の上下角を入力する必要あり。姿勢固定で飛行していても、水平面の変化により上下角が変化してしまうので、機体座標系で姿勢を指定する仕様の方が望ましいと思う。
- 姿勢角履歴を指定するファイルがおよそ350行を超えるとプログラムが動かない。ソースを読み込んでいないため、原因不明。