背景
オーストリアの学会に参加した際に、 ウィーン中央墓地にあるボルツマンのお墓参りに行った。 折しも先日の5月20日に、温度の定義が水の三重点を用いた従来の方式から、 ボルツマン定数\(k=1.380649*10^{-23}\)を定義定数とする方式となり、 ボルツマン定数の意義も更にアップしたと言える。
温度の目盛り、すなわち1度の刻み方は、人間が決める事であり自由であるが、 エントロピーの増加量を基準に取った熱力学温度を用いると、物質に依存しない。 ではエントロピーの刻み方を決め、目盛りを振ってあげなければならないが、 これがボルツマンのお墓に記載されている、\(S=k\log{W}\)によって決まる。 Wは状態の個数であり、対数の中にあることから分かるように、無次元である。 よって、人間や地球と関係なくWは全宇宙で共通の数字である。 あとは、ボルツマン定数kを定義定数として決めてあげると、 温度の目盛りも決定する。
このような定義定数は他に、光速c、素電荷e、プランク定数h、セシウム133の遷移時間 くらいしかないと考えると、偉大さが分かる。 他にもアボガドロ数Naがあるが、これは無次元量であり、 何か異なる物理量の目盛りの関係を規定するわけではないので、価値が少し低いと言える。
お墓参り
これがお墓である。あり得ないくらい顔の彫りが深い。 ボルツマン定数が温度を規定する定義定数となり、少し誇らしげに見えた。 他の方の写真を見ると以前は汚れて黒かったようだが、 最近になって真っ白に磨き上げられた。 ただ、頭部に蜘蛛の巣が張っていたので、取り除いておいた。
行き方
場所と行き方については他の方も紹介されているように、 ウィーン市内からトラムで行くか、 私のように空港から直行する場合は、SバーンのS7路線に乗って、 Zentralfriedhofで降りると、数百メートルで裏門から墓地に入ることができる。 (入場後の中の移動距離の方が数倍長いが、それもまた良し) 古い墓地であるため、他にも数えきれない程のお墓がある。 案内標識があるわけではないので、少し探し回る必要がある。 下の写真のように、墓地の中央にある大きい教会に向かって右側のすぐそばにある。
他のお墓
ウィーン中央墓地と言えば、ベートーベン、シューベルト、ブラームス、 ヨハン・シュトラウスなどのお墓もあり、 これらが一か所に集まった区画に立つと、圧倒される感じがした。 個人的にベートーベンが好きだが、音楽に関しては正直よく知らない。
歩いていると、日本人の名前を見つけて驚いた。 墓石の質感や縁石の囲い方など、日本のお墓に似ている。 服部成三郎さんは、バイオリンの教科書を書かれたとのこと。 場所ははっきり覚えていないが、ベートーベンのお墓を探しているときに 見つけたので、その近く(100m以内)であることは確かである。
2019/7/5 作成
第2弾:ニュートンのお墓参り
第3弾:カルノーのお墓参り
ピンバック: カルノーのお墓参り – それでもロケットは回っている
ピンバック: ニュートンのお墓参り – それでもロケットは回っている