日本最南端は沖ノ鳥島だとか、最西端は与那国島だとか言うが、360度ある方位の内、東西南北だけ重視するのはおかしいと思い、全方位について日本の端を計算してみた。
「端」の定義
「方位角 x 度の端」を、次のように定義する。
- 真北の方角から時計回りに x 度の方角の遠方から、その方向に垂直な直線を徐々に日本に近づけていった時、最初に日本の領土に接した地点。
ただしこの定義は地球の曲率を考慮していない2次元の定義だ。そこで地球を完全な球と仮定した時の、「端」と「端度」を次のように定義する。
- 領土の3地点O,A,Bを考える。地表を辿ってOからAへ向かう(曲率を持った)最短コースに接する、Oを起点とするベクトルを、OからAへの方位角ベクトルOA’と呼ぶ。Oを通る地球の接平面内において、OA’に垂直で領土の外側へ向くベクトルの方位角をθAとする。OA’とOB’が領土の外側に向かって成す角度φが最小になるようにA,Bを選んでも180度より大きくなる場合、地点Oは方位角θAからθBまでの端であると言い、その端度は(φ-180)度であると言う。
つまり、端度が大きい程その場所は飛び抜けた端であり、逆にプラスでないとその場所は端ではない。
計算
普通に考えて「端」でない所が今回の端になるとは思えないので、初めから8地点に絞った。それぞれの北緯と東経から、上の定義に従って端である方位角範囲とその端度を計算した結果を示す。図の肌色の領域は、それぞれの地点が端である範囲を表している。
隣り合う地点の間で、端である範囲の境界が少しずれているのは、同じベクトルでも視点の経度によって方位角が違って見えるため。
地名 | 北緯 | 東経 | 端範囲, 度 | 端度 |
---|---|---|---|---|
対馬棹崎 | 33度12分51秒 | 129度33分18秒 | – | -2.76 |
礼文島 | 45度30分14秒 | 141度04分16秒 | 310.91 ~ 356.71 | 45.80 |
宗谷岬 | 45度31分13秒 | 141度56分27秒 | – | -1.66 |
択捉島 | 45度33分19秒 | 148度45分30秒 | 2.20 ~ 77.01 | 74.81 |
南鳥島 | 24度17分00秒 | 153度59分12秒 | 80.06 ~ 170.42 | 90.36 |
沖ノ鳥島 | 20度25分14秒 | 136度04分20秒 | 163.55 ~ 199.92 | 36.37 |
波照間島 | 24度02分24秒 | 123度47分12秒 | 195.25 ~ 207.60 | 12.35 |
与那国島 | 24度26分38秒 | 122度55分59秒 | 207.25 ~ 300.27 | 93.02 |
考察
結果から分かった事で、私が興味深いと思ったものについて。
対馬と宗谷岬は、端でも何でもない
対馬の端度はぎりぎりマイナスで、端ではない。つまり、与那国島から見ても対馬より礼文島の方が北西側に位置しているし、礼文島から見ても対馬より与那国島の方が北西側に位置しているという事だ。同様に宗谷岬も、礼文島と択捉島の内側に入り込んでいて、どの方角に対しても端ではない。
最北端が無い!?
端範囲に方位角0度を含んでいる地点が無いので、最北端が無いのかというとそうではない。今回の結果が意味するのは、「自分より北側には他のどの地点も視野角に入らない」という地点は無いという事だ。地図を見ると択捉島が一番北にあるように見えるが、これは緯度が高いから。そして普通「最北端」というのは最も緯度が高い位置のことを言う。だから最北端は択捉島で良いのだが、この付近ほど高緯度になると、緯度は自分より低い位置でも見える方角は真西より北側になる事がある。
沖ノ鳥島って大した事無いね
端度別ランキングを取ってみると、与那国島、南鳥島、択捉島、と続く。何か飛び抜けて南にあるというイメージがある沖ノ鳥島の端度は意外にも36度。礼文島の方が「凄く」端なのだ。
礼文島ってイイじゃん
礼文島のストコン岬は宗谷岬より緯度が低く、一般人が到達可能な最北端の座を取られ、仕方なく立てた「最北限の地」と書かれた碑を旅行者に馬鹿にされたりしているが、今回の結果から言えば、どの方角の端でもない宗谷岬なんかより、45.8度の端度を誇るストコン岬の方が遥かに価値があると私は考える。
地図の画像は、フリー地図素材集より頂きました。有難うございます。
2003/08/30 作成
2022/11/05 昔書いた文章を見つけたので移植。