スーパーのドライアイス製造機

投稿者: | 2022年8月18日

レジの後にある、粉末状のドライアイスをレジ袋に噴射できる機械の仕組みをご存じだろうか。10年ほど前から一般化し、どこのスーパーにも設置されているが、原理を説明しているページが見つからない。ここには普段馴染みのない分子間力とジュール・トムソン効果という熱力学が潜んでいる。

構造は、液化CO2ボンベと筒だけ

あの機械の中にはドライアイスの塊があって、機械で粉砕し、昇華して無くならないように冷凍機で必死に冷やしていると思う方もいるだろう。否、ボンベには常温高圧の液化CO2が入っていて、スイッチを押すとそれが筒から噴出されているだけである。あの低温が作られるのは噴射した瞬間である。

スーパーでよく見るのはこちらの機械だろう。御覧のとおり、ただの筒をボンベにつないだだけである。こちらの動画も分かり易い。固体のドライアイスは、粉末を推し固めて作るそうだ。

なぜ冷えるか:ジュール・トムソン効果

高圧の流体を低圧空間に単に放出した場合、理想気体なら温度は変わらない。温度は分子の運動速度であり、空間を移動しただけでは減速も加速もしないことから理解できるだろう。ではなぜ冷えるのか。これは、高圧高密度の状態で作用していた分子間力である。実在気体では分子同士を近づけるとある距離から分子間力という引力が作用し始める。近づけるほど引力は増すため、高密度に圧縮すると分子同士が熱運動に負けてくっついてしまう。これが液化である。液化まで行かなくとも、高密度状態では分子間には引力が作用している。

これを低圧空間に放出すると、自由に動ける気体になるが、分子どうしの距離が離れる際に分子間力を振り切っていかなければならないため、その分だけ減速し、温度が低下する。これがジュール・トムソン効果である。

大学の熱力学で習うとは言え、初めはいまいちピンとこない現象だが、非常に身近に使われている。