Astra ステルスだったロケット会社

投稿者: | 2020年2月19日

DARPAが賞金を懸けていた競争的開発プログラムに、3社が参加していた。1つは空中発射のVirgin Orbit、1つは経営破綻してしまったVector、そしてもう一社は名前を伏せられたステルス企業だった。前者2社は既にプログラムから撤退し、残るはこのステルス企業だけと報じられていた。そのステルス企業がAstraという会社だったことが公になったBloombergの記事

実はすでに2回アラスカからサブオービタル試験機を打上げていたというから驚いた。自分が知らなかっただけか。近いうちに初の衛星打上げを行う予定とのことで、アメリカ沿岸警備隊(U.S. Coast guard)の通知に記載された落下物予想域が下の図である。

南向きのSSO軌道を狙った経路である。投棄物落下予想域が射点近傍のフェアリングとみられる広い領域と、少し離れた1段ロケットの落下域だけが存在していることから、2段式ロケットであることが伺える。H-IIAと同じように、2段目を再着火して軌道投入する方式とみられる。

機体構成

公式サイトの動画を見ると、発射時に多数の氷が落下していることから、極低温の液体燃料ロケットであり、1段ロケットのエンジンは5個クラスター構成である。また、下の図に示すように、機体構造はステンレスのような金属製である。Bloombergの記事には、アルミニウムを採用と書かれているが、筐体がアルミなのか?左に置かれているフェアリングはアルミのような光沢をしている。

SpaceXのStarShipもステンレス製であり、イーロン・マスクによれば、密度は高くて重いが、アルミ合金より耐熱性があり、コストを考えるとロケットに最適な材料とのことだから、Astraでも採用されているのかもしれない。構造部材にこのような一般材が用いられるのは、最近のロケットの潮流である。

打上げコスト

打上能力はLEOに100kg前後で、打上コストは最終目標で$1Mということで、実現すれば1回の専用打上げ費用としては世界最安値となる。なお、質量単価ではSpaceXのFalcon9相乗りで、1kgあたり$5,000が最安値ではないだろうか。自分の目標である1トン当たり1億円も、すぐそこまで来ている時代になった。

開発手法

Bloombergの記事によれば、3年間、ステルスモードでロケットを開発するため、Alameda空軍基地内の古いジェットエンジン用テストスタンドを利用し、人知れずロケットエンジンの燃焼試験を繰り返していたという。ステルス開発が可能だっただけでなく、そしてこちらの方が重要な意味を持つが、会社の近くで実験を繰り返すことが出来たため、遠くの砂漠のようなところまでエンジンを持ち運びする手間と時間を節約することが出来た。この結果3年という短期間で衛星打上げ直前という所まで開発を進めることが出来たということだ。