初号機の打上げ。母機からリリース後、ロケットの点火には成功したものの、残念ながら、途中でシーケンスが停止してしまった。航空機から放り投げてから点火する方式の難しさはの一つは、エンジンの点火であるが、そこは成功しただけでも、工学的には半分成功と言える。
ロケットエンジンは液体にせよ固体にせよ、点火ミスはよくある失敗原因の一つ。陸上発射の場合、1段エンジンは着火しなければ飛んでいかないので、修理して再トライできる。洋上発射も気球発射も、1段の点火ミスはある程度許容される。放り投げるタイプは1段点火に失敗するとそのまま落下して終了となる。ただし、2段目以降は発射方式と関係なく、いずれも空中発射と変わらない。というか、2段目以降は全て空中発射そのものである。
大気中に放り投げたロケットには、空気抵抗によるブレーキの加速度が生じるため、Virgin Orbitのような液体ロケットエンジンの場合、エンジンが点火するまでは、タンク内部の推進剤が機首側へ寄るはずである。ブレーキを掛けた電車に乗る人が先頭車両の方へ寄ってしまうのと同じである。通常、タンクの出口は後ろ側に付いているので、この状態でエンジンに燃料を送るのは難しいと思うのだが、どうやっているのだろうか。エンジンの点火後は、逆に後ろ側に推進剤が押し付けられる。因みにこのような液体の挙動問題は、固体ロケットモータを用いているPegasusロケットでは生じない。
今回は点火後、”handful of seconds”(ほんの数秒後?)でエンジンが停止したとのことなので、ひょっとしたら点火成功というのは早計で、点火シーケンスの最終段階で失敗している可能性もある。前向きから後ろ向きに切り替わる加速度による液体推進剤のスロッシングに対する実験というのは地上では不可能なので、今回のフライトで初めて実証されるはずだったのだろうけども。外野からの分析としては、この辺が怪しいのではないかと予測をしてみる。